【帝󠄁國政府聲明】(午後零時二十分發表)

恭しく宣戰の大詔を奉載し、茲に中外に宣明す、抑々東亞の安定を確保し、世界平󠄁和に貢獻するは、帝󠄁國不動の國是にして、列國との友誼を敦くし此の國是の完遂󠄂を図るは、帝󠄁國が以て國交󠄁の要󠄁義と爲す所󠄁なり

然るに、囊に中華民國は、我眞󠄀意󠄁を解せず、徒らに外力を恃んで、帝󠄁國に挑戰し來り、支那󠄁事變の發生を見るに至りたるが、御稜威の下、皇軍の向ふ所󠄁敵なく、既に支那󠄁は、重要󠄁地点悉く我手に歸し、同憂具󠄁眼の十國民政府を更󠄁新して帝󠄁國は之と善隣の諠を結び、友好列國の國民政府を承認するもの已に十一箇國の多きに及び、今や重慶政權は、奧地に殘存して無益の抗戰を續くるに過󠄁ぎず、然れども米英兩國は東亞を永久に隸屬的地位に置かんとする頑迷󠄁なる態度を改むるを欲せず、百方支那󠄁事變の收結を妨碍し、更󠄁に蘭󠄁印を使嗾し、佛印を脅威し、帝󠄁國と泰國との親交󠄁を裂かむがため、策動至らざるなし、仍ち帝󠄁國と之等南方諸邦󠄂との間に共榮の關係を增進󠄁せむとする自然的要󠄁求を阻害󠄂するに寧日なし、その狀恰も帝󠄁國を敵視し帝󠄁國に對する計畫的攻擊を實施しつつあるものの如く、遂󠄂に無道󠄁にも、經濟斷交󠄁の擧に出づるに至れり、凡そ交󠄁戰關係に在らざる國家間における經濟斷交󠄁は、武力に依る挑戰に比すべき敵對行爲にして、それ自體默過󠄁し得ざる所󠄁とす、然も兩國は更󠄁に與國を誘引して帝󠄁國の四邊に武力を增强し、帝󠄁國の存立に重大なる脅威を加ふるに至れり

帝󠄁國政府は、太平󠄁洋の平󠄁和を維持し、以て全人類に戰禍の波及するを防止せんことを顧念し、叙上の如く帝󠄁國の存立と東亞の安定とに對する脅威の激甚なるものあるに拘らず、隱忍󠄁自重八箇月の久しきに亙り、米國との間に外交󠄁々渉を重ね、米國とその背後に在る英國並びに此等兩國に附和する諸邦󠄂の反省を求め、帝󠄁國の生存と權威との許す限り、互讓の精神を以て事態の平󠄁和的解決に努め、盡す可きを盡し、爲す可きを爲したり、然るに米國は、徒らに架空の原則を弄して東亞の明々白々たる現實を認めず、その物的勢力を恃みて帝󠄁國の眞󠄀の國力を悟らず、與國とともに露はに武力の脅威を增大し、もつて帝󠄁國を屈從し得べしとなす、かくて平󠄁和的手段により、米國ならびにその與國に對する關係を調整し、相携へて太平󠄁洋の平󠄁和を維持せむとする希望󠄂と方途󠄁とは全󠄁く失はれ、東亞の安定と帝󠄁國の存立とは、方に危󠄁殆に瀕せり、事茲に至る、遂󠄂に米國及び英國に對し宣戰の大詔は渙發せられたり、聖󠄁旨を奉體して洵に恐懼感激に堪へず、我等臣民一億鐵石の團結を以て蹶起󠄁勇躍󠄁し、國家の總力を擧げて征戰の事に從ひ、以て東亞の禍根を永久に芟除し、聖󠄁旨に應へ奉るべきの秋なり

惟ふに世界萬邦󠄂をして各〻その處を得しむるの大詔は、炳として日星の如し、帝󠄁國が日滿華三國の提携に依り、共榮の實を擧げ、進󠄁んで東亞興隆の基礎を築かむとするの方針は、固より渝る所󠄁なく、又帝󠄁国と志向を同じうする獨伊兩國と盟約󠄁して、世界平󠄁和の基調を劃し、新秩序の建󠄁設に邁󠄂進󠄁するの決意は、益々牢固たるものあり、而して、今次帝󠄁國が南方諸地域に對し、新に行動を起󠄁こすの已むを得ざるに至る、何等その住民に對し敵意を有するものにあらず、只米英の暴政を排除して東亞を明朗本然の姿に復し、相携へて共榮の樂を頒たんと冀念するに外ならず、帝󠄁國は之等住民が、我が眞󠄀意を諒解し、帝󠄁國と共に、東亞の新天地に新なる發足を期すべきを信じて疑はざるものなり、今や皇國の隆替、東亞の興廃は此の一擧に懸かれり、全國民は今次󠄁征戰の淵源と使󠄁命とに深く思を致し、苟も驕ることなく、又怠る事なく、克く竭し克く耐へ、以て我等祖先の遺󠄁風を顯彰し、難關に逢ふや必ず國家興隆の基を啓きし我等祖先の赫々たる史󠄁積を仰ぎ、雄渾深遠󠄁なる皇謨の翼󠄂贊に萬遺󠄁憾なきを誓ひ、進󠄁んで征戰の目的を完遂󠄂し、以て聖󠄁慮を永遠󠄁に安んじ奉らむことを期せざるべからず


【出典】
《内容》 『内外調査資料』第14年(1)(153),調査資料協会,1942-02. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1574239 (参照 2023-11-04)